権兵衛峠を偲ぶ酒
権兵衞さんのお気に入り「にごり酒」
720ml:¥840「♪権兵衛さんが種まきゃカラスがほじる」「名無しの権兵衛さん」など、この権兵衛という名前は、全国的にあるらしいが、信州木曽にも実在していた。
国道19号線を塩尻から木曽に向かう。谷間の国道は真昼でもトラックの往来が激しい。奈良井宿を過ぎ、鳥居トンネルの手前を「県道361号線」に左折。ほとんど車の姿はない。ダム湖を右に見て橋を渡ると、その昔、川入(かわいり)と呼ばれていた集落に至る。いかにも奈良井川の源流。うっそうと茂る雑木林の中に、せせらぎの音が木霊している。
かつては分校があったというこの地までの道は、木曽楢川村の小学生達の遠足コースであった、40年も昔の話である。およそ3里近い山道を、昔の子供らは平気で歩いたのだろうか。
人気のない集落を過ぎると、いきなり険しい山道となる。この道の果てにあるのが「権兵衛峠」だ。なぜこの名前が付いたのかを問えば、なんでも1696年(元禄9年)に、この地に住む「古畑(ふるはた)権兵衛」という馬追の男が、木曽楢川(ならかわ)村から険しい峠を越え、伊那谷へと降りる輸送ルートとして道を開いたらしい。だから彼の名を取って命名された。この街道はやがて「権兵衛街道」といわれ。肥沃な伊那からは「米」を、木曽からは「漆器や工芸品」が、木曽馬の背に乗せ運ばれた。
街道は今も現存している。山肌を縫うように走る県道361号線の脇に駐車し、道の脇にある立て札に記された「権兵衛街道跡」に入ると、いきなりタイムスリップしたかのような錯覚にとらわれる。木漏れ日と土の匂い。肺の中が洗われるかのように澄んだ空気。蓑傘を纏い、木曽馬を引く行商人とすれ違いそうな風情さえある。
やがてたどり着いた分水嶺には、近年に建てられたらしい古畑権兵衛の碑と東屋が木立に中にさりげなく置かれ、その傍らに懇々と湧き出る山の清水が、山道を歩いてきた我々を出迎えてくれた。苔むす水源に掌を浸し、水をすくい口に含むと、なんとまあまろやかなこと。みるまに心身にしみ渡ってゆくのがわかる。・・・・そこからさらに道を登ると、いきなり開けて伊那盆地が広がる、遙かに腰雲たなびく南アルプス連峰。木曽谷を出て初めて、この頂上に立ったかつての旅人は、「伊那はまさに別天地」と、この峠で感嘆したことだろう。
西暦2005年、山を切り開いて開通した権兵衛トンネルは、新権兵衛街道として2006年2月に木曽日義村に到達した。伊那から木曽がおよそ30分。まさに驚異である。
確かに「権兵衛街道」は難所であった。県道が開通してからも土砂崩落や天候による通行止めが相次ぎ、利用は困難を極めた。トンネル開通後の現在は一体日に何台の車が行き来しているのだろう。
しかし、切り立つ山々の紅葉の見事さ、澄み渡る青空とさんざめく光、鳥は歌い、木々はざわめき、静けさが緩やかに時を止める。難所であるからこそ守られた、豊かな自然が「権兵衛峠」には息づいている。
伊那では別名「米街道」とこの道を呼ぶ。権兵衛峠をこえた伊那の新米は木曽の酒蔵で醸されたこともあっただろう。五穀豊穣を願って醸すどぶろく風味の「にごり酒」は、ちょっぴり辛口で権兵衛さんのお気に入りの酒だったかもしれない。権兵衛峠に湧く清水のように、豊かで素朴な酒の原点。
七笑は、そんな豊醇にごり酒に「権兵衛峠」と名付け、ささやかな木曽の歴史を守ってゆきたいと願うのだった。

豊醇なにごり酒は、日本酒の真の味わいを持つ、素朴で懐かしいワイルドな酒。
分類/にごり
原料/米・米麹・醸造アルコール
度数/15~16度 日本酒度/+3
酵母/7号
呑み方/○冷酒 ◎常温
保存方法/常温
容量/720ml







